エジプト
 
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 ヒエログリフ解読
(古代文字へのご招待)
(1)「ツタンカーメン(トゥト・アンク・アメン)の復興碑
 第1回目はツタンカーメンの復興碑訳です。古代エジプト語を研究する、K.N氏による解読をご紹介いたします。
 
 石碑のすべてのネスウ・ビティ名とサーラー名はホルエムヘブに変えられていますが、ここでは元の名前にしてあります。破壊等により解読不能箇所(・・・部分)もあります。なお( )は解読者による注釈です。
 
   
陛下の治世(1年目か?)、増水期第4月19日
ホルス名「強き雄牛、誕生の似姿」
二女神名「法が完全なるもの、二国を治める者・
黄金のホルス名「王冠を被るもの、神々を満足させるもの」
ネスウ・ビティ名「ラー神の姿の主」
サーラー名「トゥトアンクアメン、上エジプト・ヘリオポリスの支配者」
ラー神の如く永遠の命を与えられますように。

アメン・ラーそれは二国の王座の主、カルナックのアメン大神殿の第1人者。
アトム、それは二国の主。
プタハ、それは彼の壁の南側にいるもの。
トト、それは神聖なる言葉の主。
私(トゥトアンクアメン)は彼らに愛されたる者で・・・わが父ラー神のごとく毎日・・・に現れる。

良き神(王のこと)アメンの息子。カームトエフ(彼の母の雄牛、ラー神のこと)が生みし者。有益な種(神の子孫としての王の別称)。アメン自らが作った卵。
創造する者(神)が彼を創った。誕生する者(神)が彼を産んだ。
ヘリオポリスのバー達は、彼を産み出すために、そして、永遠に王たらしめるために集合した。
ホルス、それは永遠に持続する者。良き支配者。

父アメンのために有益なことを行った者。荒廃したものを永久記念物として修復した者。
彼は二国の国中に蔓延した無秩序を撃退した。(その結果)マアトが・・・に確立した。
彼は虚偽(宗教改革の教えのことか?)をタブーとした。国土はその大地の開闢(かいびゃく)の時のようであった。

陛下が王として登場した時、・・・神々と女神たちの神殿はエレファンティネから湿地(デルタの湿地帯)まで廃墟と化していた。
・・・それらの建物は忘れ去られ、朽ち果てた状態で、瓦礫の山となり、雑草が生い茂り、建物は影形も無いようになっていて、かつての神殿は踏み荒らされた道になり、国土は混乱状態であった。
神々は彼らとこの国に背を向けた。
もし、エジプトの国境を広げるためにジャヒ(シリア方面)へ軍隊を派遣しても、全く成功することはなかった。
救いのために神にひたすら祈っても、(神が)来ることは決してなかった。女神に懇願しても、(女神が)来ることは決してなかった。
彼ら(人々)の心は彼ら(神々)の像の故に衰弱した。彼ら(人々)は造られたもの(神々の像)を破壊した(からである。)(*ここではアマルナ時代との関連で考えるべき)
これより時を経て・・・、陛下が彼の父の玉座に現れた。
彼(陛下)はホルスの全土を統治した。ケメト(黒い土地)とデシェレト(赤い土地)は彼の配下となり、どの国も彼の権力にひれ伏した。

そこで、陛下は、天空にあるラーのように、アアケペルカーラーの家にある彼の宮殿に居て、この国の統治を執り行い、両岸の日々の任務にあたり、・・・解決策を探求した。(*アアケペルカーラー(トトメス1世)の家はメンフィスにある、ということは、ツタンカーメンはアマルナからメンフィスへ遷都して、ここから復興の勅令を出したのである)

そして、陛下の心は優れたすべての行為をするように心掛け、父アメンのために有益なことを追い求め、本物の琥珀金でアメンの高貴な像を造った。
彼は正にかつて成されたこと以上のことを成した。彼は父アメンを13ネバの神輿担ぎ棒の上に造った。その像は・・・琥珀金やラピスラズリ・・・などすべての高価な宝石で作られていた。実は、このご神体は、以前は11ネバの担ぎ棒の上にあったのだ。(*1ネバは長さ65~70センチ。アメンのご神体の神輿担ぎ棒を2ネバ長くしたことは、その祝祭がより盛大に行われたことを示している。それはルクソールの神殿のオペト祭の壁画にも現れている)
彼はかの南の壁の者、アンクタウイの主、プタハ(の像)を造った。(*アンクタウイはメンフィス地区のこと。つまり王都メンフィスを重要視した)
その像は・・・で作られていて、・・・。(*この部分を「11ネバの棒の上にあった」と読んだ訳がある。「エジプト学研究 第7号」54頁)その神聖な像は琥珀金、ラピスラズリ、トルコ石、そして高価な宝石で作られていた。実は、この高貴なご神体は以前は・・・の上にあったのだ。(*この部分を「9ネバの担ぎ棒」と読んだ訳がある。つまりアメンとのバランスを図ったと思われる)

かくして、陛下は神々のための復興を行った。神々の神像を外国の最高級の琥珀金で作り、神々のご神体を永代の記念建造物として新たに建造したのである。
また、日ごとの秘儀に満ちた神聖な供物を神々の前に備え、この世における神々の供物用パンを供えさせ、以て神の所有物を素晴らしい状態にした。

陛下はこれまであったこと以上のことを行った。彼は祖先の時代を超えた。
陛下は、神の長老の子供たちやその名が知られている有名人の息子たちの中からウアブ神官やヘムネチェル司祭に就任させた。(*これはアマルナ革命以前の旧体制の有力者一族に、ツタンカーメンの基盤があったことを示すものか?)

陛下はそれら(神殿)の(財産?)を金、銀、青銅、銅で限りなく増やした。
陛下は神殿の作業場を陛下の戦利品から献上された奴隷と女奴隷で満たした。
各地の神殿のすべての(財産)は、銀、金、ラピスラズリ、トルコ石、すべての高貴な宝石、王の亜麻布(もっとも高価な布)、白亜麻(白布)、細亜麻(良質の布)、モリンガオイル、樹脂、脂肪、・・・、香料、乳香、没薬などあらゆる良きものを際限なく用いて、2倍、3倍、4倍になった。

陛下はナイルの流れに浮かべるための神々の聖船を造った。
それはネガウ(ビブロス)の地の厳選された最上級のほんもののヒマラヤ杉でできており、外国の最良の金で仕上げをされ、それはナイルの流れに光り輝いた。

また、陛下や王宮の従者に属する侍従や侍女、歌手や踊り子を清め(*神殿の従事者になることか?)彼らの労働(給料)は、二国の主(王)の・・・から支払われた。

余は、祖先とすべての神々のために彼ら(神殿の従事者達)に免税措置がなされるようにする。彼らのカーが欲することを為し、・・・を守護することで彼らが喜ぶのを余は望む。この国に居る神々と女神達、彼らの心は喜ぶ。
聖所の主(所有者)たちは歓喜し、各地は大いなる歓声、また歓声に満ち溢れている。

良きことが実現した。大神殿の中に居る9柱神は、その両腕を掲げ礼賛の状態である。
彼ら(9柱神)の手は永遠に続くセド祭で満たされ、彼らの下にある全ての生命と支配力が「誕生をくりかえす者」ホルス(王のこと)の鼻にもたらされた。
その誕生のために自ら誕生する者(アメン)の愛し子。
ネスウ・ビティ名「ネブ・ケペルウ・ラー」アメンが愛した者。アメンに愛された正当な長男。自ら誕生する者、父を信奉する者、彼の王権は父オシリスの王権である。

サーラー名「トゥト・アンク・アメン・ヘカア・イウヌウ・シェマウ」
自ら誕生する者(神)に有益なる者。無数の記念物と奇跡(の人)。父アメンの為に記念物を誠心誠意造る者。
誕生の似姿。君主。

この日、余は故アアケペルカーラー(*在メンフィス)の家に居て、若々しくて、体中の欠点を取り払った。(*別の解釈として「体の上を通り過ぎるコブラを捕えた(戴冠した)」(*ツタンカーメンはメンフィスで戴冠式を挙げた)
クヌム神は剛腕の持ち主で、かつ勝利に卓越した者として力が偉大である者に彼(王)を創造した。・・・(ムト女神?)の息子(セト神?)のように力が強大で、ホルス神のように腕力があり、全国の猛者のうちで同等の者はいない。


ラー神のように知識を集めた者。トト神のように知識ある者。法を定め、布告を奨励し、雄弁な者。上下エジプト王。二国の主。力の主。ネブ・ケペルウ・ラー。神々を満足させる者。(ラー神の実子で)彼に愛されし者。全ての国の主。王冠の主。
トゥト・アンク・アメン・ヘカア・イウヌウ・シェマウ。
生命、安定、支配をラー神のごとく永遠に与えられし者。