今回から、新シリーズが開始されます。
古代においても動物たちは飼い主に愛され、死ぬとミイラにされて大切に葬られました。
ペットシリーズの第1回目は、カイロ博物館1階11室(入口より左側奥)新王国時代、サッカラ出土の石灰岩製の猫の棺の碑文を読みます。
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これはアメンヘテプ3世の息子でメンフィスの高級官僚の一人であったジェフティメスの飼い猫の石棺です。
棺の正面には、人間の場合と同じように愛猫の似姿が描かれていて、その前には供物が捧げられています。
しかも、人間に対する場合と同様の祈祷文であることが印象的でした。
愛猫の死後、あの世で復活するようにとの願いを込めて、棺の中にはミイラ化されて亜麻布で丁寧に巻かれた猫の遺体があったと思われます。
猫のミイラは数多く発掘されていますが、これほど見事な碑文付きの類例は希少です。しかし文面の崩壊が激しく、読み取るには相当の困難がありました。(K.N)
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猫をペットとして飼い始めたのは古代エジプト人です。コプトスの神殿で発見された中王国第11王朝時代のレリーフに残された猫が、現在知られている最古の飼い猫です。
猫は古代エジプト語ではミウ(miw)と呼ばれていましたが、これは鳴き声に由来しています。
新王国時代になると猫をペットとすることが広く普及し、貴族の家庭では猫の他にもペットとしてイヌやサル、アヒルなどを飼っていました。
猫は第3中間期以降、デルタ地帯のブバスティス(テルバスタ)と中部エジプトのベニハッサンを中心に女神として信仰され、ミイラとして埋葬されるようになりました。
この棺の持ち主は、新王国18王朝アメンヘテプ3世時代とのことですので、ミイラ化された猫としては非常に古い時代に属するものと思われます。
ちなみに、この猫の名前は「ミイト」女性の限定詞(t)が付いていますから、メス猫だったのでしょう、現代の名前でいうと、「ミイちゃん」といったところでしょうか。古代の人々も、現代の私たちも、ペットを慈しみ、その死を悼む気持ちは同じなのですね。解読された碑文を読んで感動しました。(小)
「岩波ジュニア文庫 ものの始まり50話」近藤二郎著を参考にさせていただきました。
内容に誤りがあった場合、その責は小柳に帰します。
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青銅製の猫の像 |