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ヒエログリフ解読
(古代文字へのご招待) |
(18)猫の棺(おまけ)
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前回の「ヒエログリフを読む」でご紹介した猫の「ミイちゃん」彼女の飼い主が判明しました。前回 『これはアメンヘテプ3世の息子でメンフィスの高級官僚の一人であったジェフティメスの飼い猫の石棺です。』とご紹介させていただきました、
このジェフティメスさん、あのアマルナ改革をしたアクエンアテン(アメンヘテプ4世)の早世した兄でした。彼は、アメンヘテプ3世と王妃ティイの長子として生まれ、ゆくゆくは王位を継ぐはずでした。父アメンヘテプ3世がまだ健康であったため、北の主要都市メンフィスでプタハ神殿(現在のラムセス2世の巨像があるあたりにあった大神殿)の大神官を務めていました。ミイちゃんはこのプタハ神殿または彼の自宅で飼われていた飼い猫だと思われます。
彼の死亡の理由は分かりませんが、父アメンヘテプ3世が在位中に若くして亡くなられました。(一説によれば、アメンヘテプ3世の即位30年祭の寸前だったとか)そのため、二男であるアメンヘテプが王位継承の王子となり、その後アメンヘテプ3世の逝去に伴い、アメンヘテプ4世として王位に就きました。
歴史に「もし」はない、と言われますが、もし、ジェフティメスが長生きをしてアメンヘテプ3世の後を継いで「トトメス5世」として即位をしたら、アマルナ改革は起こらなかったかもしれませんし、それに次ぐツタンカーメン王の即位もなかったかもしれません。ラムセス王朝による黄金期もなかったかもしれません。そうしたら、今頃カイロ博物館の2階の一角には、どんな展示がされていたのでしょうか?カルナックの大列柱室やルクソール神殿の様相も全く異なるでしょうし、アブシンベルに神殿がない?そんなエジプトだったのかもしれません。
ちなみに、ペットに「ミイちゃん」のような名前の付け方をするのは、当時としては斬新だったようです。彼の独創的な才能が、十分に発揮できないまま短い人生を終えたことは非常に残念です。ジェフティメスの名のある小さな棺型の遺物がベルリンのエジプト博物館にあります。王子ジェフティメスの死は、エジプトの歴史を大きく動かすターニングポイントだったのかもしれませんね。
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ジェフティメス王子 |
河合望「ツタンカーメン少年王の謎」、ニコラス・リーブス「アクエンアテン」を参考にさせていただきました。
内容に誤りがあった場合、その責は小柳に帰します。
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