エジプト
 
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 ヒエログリフ解読
(古代文字へのご招待)
(2)「ラテラノ・オベリスク」を読む
 第2回目はローマにあるトトメス3世のオベリスクの訳です。古代エジプト語を研究する、K.N氏による解読をご紹介いたします。 
  
ラテラノ・オベリスク
(撮影:ハト子さん)
 このオベリスクは、現存するオベリスクの中で最大(現在の高さ32m)のものである。

 トトメス3世によって造られたが、カルナックの工房に35年間も放置され、孫のトトメス4世によってカルナック神殿に立てられた。

 その後、ローマに運ばれ、地下7mの深さに埋まっていたのを1年以上かけて掘り出されたり、紆余曲折を経て、現在地ラテラノ大聖堂のサン・ジョバンニ広場に移築された。

 オベリスクの頂点にキリスト教の十字架が取り付けられている。
<解読>

 ホルス名「力強き雄牛、テーベの輝き」
 二女神名「天に於ける太陽神ラーの如く、永続する王位」
 黄金のホルス名「神聖な出現、強力な王権」
 ネスウ・ビティ名「ラーの出現は確固なり、ラー神に選ばれし者」
 サーラー名「トト神の誕生、善きことの出現」

 彼(トトメス3世)は、二国の王座の支配者、父アメンラー神のための記念碑として(これを)建立した。

 彼(トトメス3世)は、カルナック神殿に近い神殿の玄関口に1本だけのオベリスクを立てさせた。
 
 これはテーベに初めて建立された、1本だけの個立したオベリスクである。

 彼(トトメス3世)に生命を賜りますように。
 
 <N氏による解説>

 写真の面に書かれたヒエログリフは、その内容から「オベリスク献呈の辞」で、顔が左向きの書き方になっている。ということは、このオベリスクは神殿の塔門前、この面を正面にして、至聖所に向かって右側に立てられていたものと推測される(R.ハバシュ著『エジプトのオベリスク』p.17参照

 オベリスクは2本が対になって塔門の左右に建立されるのが普通であるが、これは1本だけと云われている。これは1本だけ(単独)であることが、オベリスクの碑文に2度にわたって書かれている。

 多分、巨大すぎて相棒を造ることができなかったのかも。もしかしてアスワンの「切りかけのオベリスク」が相棒だったりして…。(←N氏の新説!?)

 N氏はこのオベリスクの碑文最下部の終わり方が少し不自然に思われると指摘されています。通常、「生命を賜りますように」という意味の文字の次には、「ラー神の如く永遠なる」と続けられる場合が多いことを考えると、このオベリスクももとはそうであったが、何らかの理由(運搬中の破損など)で根本部分が紛失したものと推察される。と…

 そうなんです、現在約32mのこのオベリスクは、ローマのチルコマッシモ(競技場)に以前建立されており、その当時は高さ36mあったと言われているそうです。どのような理由で倒れたのかわかりませんが、オベリスクはその場所で倒れ(その際に3つに割れてしまったとか?)、1587年に地中から掘り出され、1588年に現在の位置に建てられたときには、高さ32m+台座部分となっていました。

 さて、消えた4mには、いったい何が書かれていたでしょうのか? 

*岡本正二氏「世界のオベリスク」というHPを参照させていただきました。
 また、オベリスクの写真はハト子さんからお借りしました。ありがとうございます。(小)