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 ヒエログリフ解読
(古代文字へのご招待)
(3)トトメス3世のオベリスク(東面)を読む

 今回はイスタンブールのヒポドロ-ム広場にあるトトメス3世のオベリスク(東面)の訳です。古代エジプト語を研究する、K.N氏による解読をご紹介いたします。 
 
イスタンブールのオベリスク
  「このオベリスクは、エジプトから運び出されたオベリスクの中で一番最後のものである。これが最初に建立された所は、カルナック神殿の第7塔門南側で、このオベリスクを引き下ろすためにローマ人が使ったと思われる傾斜路の遺跡を、フランス隊が最近発見した。」
(R.ハバシュ 「エジプトのオベリスク」より)
 <解読>

 ホルス名「力強き雄牛、テーベの輝き」
 二女神名「天に於ける太陽神ラーの如く、永続する王位」
 黄金のホルス名「雄々しく、力強く、神聖なるもの」
 ネスウ・ビティ名「ラーの出現は確固なり、ラー神に選ばれし者」

 彼(トトメス3世)は、二国の王座の支配者、父アメンラー神のための記念碑として(これを)建立した。
<K.N氏による解説>

 カルナック神殿の東端にあるトトメス3世祝祭殿に1対のオベリスクが描かれているのを、私(N氏)は2008年に撮影してきました。そのレリーフの中に描かれたオベリスクについて、碑文の一部がこのイスタンブールのオベリスクの碑文と上部3分の2までが一致していることに気がつきました。
 つまり、このオベリスク(高さ約20m)は、元の高さの3分の1にあたる根元部分が失われていて、これの本来の高さは30mという最大級のものであったと考えられます。流石、トトメス3世!

 なお、レリーフから失われた根元部分を解読しますと、以下のように読めます。
「彼は、ラー神のような永遠なる命が授けられるようにと、金箔のピラミディオンを戴く、花崗岩製の巨大なオベリスクを建立した。」

 カルナック神殿のレリーフではその一部が削られています。これはイスタンブールのオベリスクのアメン・ラー神の名前がある個所と一致し、多分、アテン神を唯一神とした後世のアクエンアテン王がアメン・ラーの名前を削らせたものと思われます。ということは、このオベリスクは、建立後数十年を経て、何らかの理由により下3分の1のところで折れて地中に埋もれ、その結果、後世の王たちの仕業である削除の被害や王名改変の難を免れた、と考えられます。するとこのオベリスクの根元が無い訳も説明できます。
 

 イスタンブールのトトメス3世のオベリスクは、ローマ皇帝テオドシウスがこのオベリスクをこの場所に運び込んだとされているので、「テオドシウスのオベリスク」とも呼ばれます。イスタンブールの有名なスルタン・アフメッド・ジャミー(ブルーモスク)の西側、ヒポドロームの跡地にあります。

 今回はスペースの関係で東側の1面だけを載せさせていただきましたが、このオベリスクに関しては、東西南北すべての面をN氏はすでに解読済みですので、次回以降、すべての面をご紹介させていただきます。

 えっ?オベリスクって全部の面に同じ文字が刻まれていたんじゃないの?そうなんです、オベリスクはそれぞれの面で書かれている内容が異なるのです。この東面は非常にフォーマルな(?)内容ですが、別の面ではトトメス3世の自慢が盛り込まれ、ずっと人間臭く、また面白くなってきます。お楽しみに!
 
*岡本正二氏「世界のオベリスク」というHPを参照させていただきました。
 また、オベリスクの写真は、かなり昔にヤマザキが撮ってきたものです。当時はヒエログリフを読もうとは思ってなかったので、非常に遠く、しかも全体像ではなく…イメージフォトですね(小)