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 ヒエログリフ入門
(古代文字へのご招待)
ツタンカーメン王墓西壁
 前回に引き続きツタンカーメン王墓の壁画を読む「実践編」です。

 今回はツタンカーメン王の玄室西壁のシーンに挑戦です。と言っても、下の写真の最上段の2つの文章です。実は今回もヒエログリフ初心者の小柳が解読に挑戦!と意気込んだのですが、あまりの難解さに、ヒエログリフ研究N氏にお願いしました。

 写真は、今回もニコラスリーブス氏の「The Complete Tutankhamun」からです。
 このシーンは、「冥界の書」(The Book of the AMDUAT)の1時を記述したものの1部です。

 「冥界の書」とは、1時から12時まで、各時間ごとにストーリーがあって、12時に到達したら、太陽神が再生する=朝日となって地平線から昇るという、再生復活の神話です。

 2つの文章のすぐ下の段には、5人の神々に先行されたケプリの姿をした太陽神が描かれていて、この段ではアムドゥアトの12時、つまり夜明けの情景が描かれています。

 その下の12匹の狒々は、昇る朝日に顔を向けて嬉々としている様子であると思われます。

 さて、文章を見ていきましょう。まずは最上段の右側の文章です。
 ここで、初心者にとって最大の試練が待ち受けていました。

 「ヒエログリフは縦書きも横書きもできるけれど、文章は必ず動物の顔が向いている方向が先頭となる」これがヒエログリフ学習の「イロハのイ」です。ここはもちろん一番右端の「tn」から読み始めるはずです。

 しかし、N氏から天の声、ここは一番左端から読み始めるのです。しかもツタンカーメン墓に書かれているこの文章は、語順がかなりシャッフルされているそうです。

 トトメス3世墓やその他の王墓の壁画に実際に書かれている碑文を参考に、ツタンカーメン墓の文章を通常レベルに修正すると、以下のようになります。これはもう、パズルの域に入っていますね。
 そしてこれでやっと文章の意味をとることができます。

<右の文章>
 この町の門を航行する夜の太陽の船に乗っているこの神を、2人のマアト女神が引いている。

 続いて左側の文章です。実際の壁画はこの通り
 
  これも左から読み始め、一般的な語順に直すと以下のようになります。
 
 <左側の文章>
 この神がそれらの上を雄羊として通過する。

 3000年以上も前に書かれた宗教文書です。正直な話、意味は良くわかりません。「冥界の書」だけを研究している研究者もたくさんいますが、日本語での解説本などは出ていないと記憶しておりますので、さらっと流してください。

(間違った点がある場合には、その責は小柳に帰します)